アライ アストラルX(ASTRAL-X)レビュー ツーリング特化は伊達じゃない!

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アライから最高級ラインナップ初のツーリング特化型ヘルメット アストラルXが今年の6月に発売になった。アウターバイザーのプロシェードに巻き込み風防止の後付チンカバーも付属する充実ぶり。インナーバイザーといったギミックを許容しないSNELLを重視する姿勢のため、アウターとなったプロシェードの実力を知りたく購入したのでレビューする。

アライ各製品の位置づけ

レビューの前にまず2016年時点のアライのラインナップからアストラルXの位置づけを確認しよう。アライのフルフェイスは4グレード5製品で構成されていることが多いが、アストラルXの追加で4グレード6製品となった。

・2万円台中盤 ローエンド HR-MONOシリーズ(簡略内装、CLC帽体)

・2万円台後半 ミドルクラス QUANTUMシリーズ(名称不定 やや簡略内装、CLC帽体)

・3万円台前半 アッパーミドル アストロと同グレードでモデルの違うラパイドシリーズ(上位内装、PB-CLC帽体)

・4万円台中盤 ハイエンド レース向けのRX-7シリーズと、ツーリング向けのアストラルX(上位内装、PB-SNC2帽体)RX-7シリーズだけレース向けのベンチレーションを装備し、それ以外は通常利用にあわせたベンチレーションを採用している。

アストラルXはプロシェードやチンカーテンが標準装備されており、ツーリング特化モデルとなっている。なお、プロシェードが気に入らなければRX-7Xと同じVASタイプの普通のシールドが利用可能だ。

外観チェック!

まず外観および各種機能を順番にチェックする。  

正面

アライ アストラルXの前面

相変わらず数十年前から変わらないこの感じ。良くも悪くも一発でわかるアライの形。前頭部に新型のベンチレーション二つと、口元と、シールド上部のブローシャッターの合計5箇所から空気を取り込めるようになっている。

アライ アストラルXのブローシャッター

アストロIQ等と大きく違う点は、ブローシャッターの風の流れが変わったこと。シャッターはプロシェードタイプだと上下にスライドさせるタイプになっているが、プロシェードではないVASノーマルシールドは従来どおり開くタイプ。 プロシェードが気に入らなければパーツ不要で交換可能だ。

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従来製品は額に直で当たって局地的に額が冷えるだけで、快適どころかむしろ煩わしく感じていたが、アストラルXでは左右に回り込んでこめかみあたりに流れるようになっている。と公式には書かれているが、実際どこに風が流れているのか気になったので内装をめくってみたところ、パーツ自体はただのストレート構造で、メッシュ部分にゴムシートが配置されており、左右のこめかみ方向に行くと青いメッシュ部分からゴムシートがなくなって風が出てくるようだ。

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頭部の新型ベンチレーションはレバーを前後にスライドさせて開閉する仕組み。 アストロの次期モデルもおそらくこれになるのかな?      

アライ アストラルX 口元のベンチレーション

口元のベンチレーションは全閉、半開=口元への風の流れ、全開=口元とシールドの曇り解消 の3パターン。全開にすると目にも風がきて長時間高速を走ると目が乾くので、基本は半開、どうしても暑かったり曇った時は全開にするような使い方だ。シールドについては別項目で記載する。

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新型のVASシールド採用によってシールドホルダーが一回り小さくなっている。不要な突起物を極力少なくして転倒時にひっかかりにくいようにするという思想らしいが、それがどれくらいの意味を持つのかは不明。また、出っ張りも抑えられているので静音性は少し向上したかもしれない。

後ろ

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うーん、この青の横ラインはちょっとかっこ悪い。もうちょっと縦か斜めにラインを入れられなかったのだろうか。

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まぁそれは置いておくとして、排気用のベンチレーションは中央のレバーを左右にスライドさせることで、全開、半開、全閉に設定できる。どっちがどっちかいつもわからなくなるけど。空力性能を向上する効果もちょっとありそうだ。

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下部にはサイドと中央に排気ダクトがある。中央はどこから空気が抜けるのだろうか? ネックパッド内やすぐ上の帽体には空気の通り道はないので、ネックパッド内のスポンジ部分を抜けていくのかな? 効果があるようには見えないけど、何かしらあるのだろう。たぶん。

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サイドのダクトは実際にどこから空気が抜けているのか息を吹きかけて確認してみたところ、チークパッドの外側にダクトを発見。後方のダクトから負圧を利用してシールド内の空気を排出する仕組みのようだ。また、ブローシャッターから入ってきた空気も逃していると思われる。

底面 エアロフラップと脱着式チンカバーが優秀

アライ アストラルX エアロフラップ

新しくなった部分はないが、エアロフラップによる巻き込み風防止は非常に優れている。 しまった状態でも効果を発揮し、引き出せばさらに巻き込み風を低減できる。

アライ アストラルX 標準付属のチンカバー

さらにプラスして、脱着式のチンカバーが標準で付属。取り付けは簡単でエアロフラップを引き出して隙間から差し込むだけ。差し込み場所が少しわかりにくいが、除くと縦のラインが見えるの一度マニュアルを読みながらやると良いだろう。このチンカバーとても良くできていて、立体的な形をしている。顎とわずかに隙間を作ることで吐き出した息がその隙間と左右から抜けていくようになっている。

チンカバー取り付け方法

多少息苦しさはあるものの、ショウエイのチンカバーに比べると快適だ。また巻き込み風もほぼ完全にシャットアウトした上にわずかな隙間から空気が流れて抜けていくのがわかる。夏はエアロフラップだけで十分だが、冬はネックウォーマーが引き出したエアロフラップにあたって引っ込んでしまうことがあるので、チンカバーを使うと良いのではないかと思う。

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また、従来製品では口元が狭いと不評だったが、本製品は口元のベンチレーションから下の部分が広くなっている。上唇は相変わらず当たりそうになるが、下唇は広々としていて息苦しさが軽減している。

内装

アライ アストラルXの内装
アライ アストラルXスピーカー取り付け位置

チーク、ネック、頭頂部、顎紐カバーが取り外し可能。スピーカーはチークパッドに埋め込むようになっていて、カバーを外して丸くくりぬかれたスポンジを外せばOK 発泡スチロールが深さ1cmくらいくりぬかれている。直径は大きめですごく大きいスピーカーでも埋め込み可能だ。深さが足りない場合、チークパッドはオプションで販売しているものだし発泡スチロールをちょっと削ればいいだろう。※自己責任です

アライ アストラルXにSB4X、SENA20Sのスピーカーを取り付ける
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ためしに各種インカムのスピーカーを埋め込んでみたけど、なかなかいい感じに収まる。ケーブルの取り回しは裏側を通して取り出す。もしケーブルが短い場合は帽体にセットする際にカバーの部分を少し引っ張ってケーブルを引き出してからセットすると良い。

アライ アストラルX 内装調整方法

それともうひとつ優れた点は、きつかった場合にチークや頭頂部のパッドからスポンジを外しが可能。数箇所に取り外し可能なスポンジが入っているので、外すと1mm程度大きくなるようなイメージ。これでも調整しきれない場合はオプションの内装を購入して調整する。

被り心地

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アストロTrという3世代前の製品と比較すると、チークパッドが若干緩くなっている。アストロIQから採用されたチークパッド下部の張り出しによって、頬は緩く顎をきつくというコンセプトらしい。そうかもしれないけど、ちょっと緩すぎる気がするので、チークパッドを標準の20mm厚から25mm厚に変更したところちょうどよくなった。僕は頬や顎は細めなので、一般的な頭の形の人は標準でちょうどいいかもしれない。

重量

重さを量ると1625g、プロシェードを外してノーマルシールドにすると1559gだ。Z-7と比べるとやはり持った瞬間に重さの違いを感じるレベル。とは言え、サンシェード付きのフルフェイスではGT-Air(グラフィック)が1525g(公式情報)なので、100g差と考えればまずまずか。ただやはりもう少し軽くあってほしいとは思う。実際に被っても数値くらいの差は十分に感じた。

プロシェードの視界は良好

VAS版プロシェード
VAS版プロシェードを半開にする

アウターのシェードは全開、半開、全閉の3つ。もとのシールドを開けてさらにアウターも開けるとさすがに見慣れない姿に違和感を覚える。

VAS版プロシェードの視界
VAS版プロシェードを半開にした場合の視界
VAS版プロシェードを全閉にした場合の視界

超広角のウェアラブルカメラを突っ込んで実際の視界に近いような写真を撮ってみた。上から全開、半開、全閉。 全開だとわずかに視界に入るがほぼシェード無しと思って良い。半開の日よけモードはとても便利。普段スモークに慣れているので景色もスモーク越しに見ているのだけど、やはり本当に素晴らしい景色の時はクリアで見たくなるときがある。そういった時にシェードを半開にすると視界はクリアで日差しだけ50%カットしてくれて、非常に見やすいのだ。

半開時はやや風切り音が大きいが、景色を見たい時は速度が遅いので特に問題にはならなかった。全閉では80%くらいがシェードに覆われた状態となる。下のほうのシェードが無いのは慣れれば問題は無い。それより購入前に気になっていたのはブローシャッター部分の隙間だ。写真でもわかるとおり、1mm程度の隙間があってそこは明るい光が入ってくる。すごく気になりそうだったが実際に走ってみると意外と気にならなかった。ただ個人的にはブローシャッターなんてやめて全部シェードで覆ってくれればいいのに。と思う。

新型シールドVASで交換は楽になったが密閉性は改善されず

VASシールドの外し方1

長いことアライの欠点といわれてきたシールドのシステム。プロシェードを使う場合は交換することがあまり無いが手順を確認。シールドを開けて黒いレバーを押すと、ホルダーがパカンと外れてシールドがさらに押し出されて浮く。 ホルダーはワイヤーでつながっているので気にせずレバーを押せばOK

VASシールドの外し方2

そのままシールドを少し下げると、本来であれば金色の金具がヘルメット後方に行くところを上の赤丸へ向かって滑り出す。赤丸まできたらシールドを取り外す。

VASシールドの取り付け方

次は取り付け。丸で囲った2箇所がはまるようにシールドを配置して、少し抑えながらシールドを開けると金の金具がレバーの位置まですべる。パチンと金具がレールにはまれば取り付け完了。最後にホルダー上部の爪を上から下にスライドさせるように引っ掛けて、ホルダー下部を押すとパチンと音がしてはまる。ショウエイと比較すると、シールドの開け閉めとホルダーを取り付ける作業があるので若干工数は多いが、以前の壊れそうな恐怖感を覚えながらの作業と比べればかなり簡単になった。

VASシールドでも隙間ができてしまう

そして一番気にしていたシールドの密閉性問題について。アライはシールドを下げてロックした時、ロックの逆側が微妙に浮いてしまって風が入り込んで目が乾いたり、風切り音が発生したりする。残念ながら今回のVASも改善されていないことを確認した。写真は息を吹きかけてどれくらい内部に漏れているか、ロックのみとロックして押さえつけた時の比較。シールドを下げてロックさせた後、右下を抑えて密閉させる必要があるのだが、新型シールドVASになってもこれは同じだった。シールドホルダーの位置を修正して直るかと試行錯誤したがやっぱりだめ。非常に残念だ。

ショウエイは一定の位置で左右が同じように動き、最後左下をロックすると右側も密閉するところまでガクっと押さえ込まれるため一発で密閉される。それに対してアライは最後のロック時の数ミリが右側は下りてないのと、ロックするために押さえ込んだ分、右側が浮いてしまう。わずかなので大きな影響はないんだけど、真冬は冷たい風が入ってくるのがわかる。密閉するためには真ん中から右を少し下へ抑えてやる必要がある。

シールドホルダーの位置調整は簡単

VASシールドの位置調整

結論としては密閉性に問題ありということなのだが、これで終わっては面白くない。極力良い状態に持っていくためにホルダー位置の調整を行う。丸の部分、2箇所がネジ止めされていて1円玉でまわせるようになっている。これを左右両方を緩めて動かしながらベストな位置を探っていく。まず、隙間がなぜ発生するかだが理由は3つ。

1つ目はロックが左にあって左だけ淵ゴムに押し付けられること。これは左にしかロックがないのだから仕方が無い。

2つ目は左を最後ロックするまで下げた時に右は最後まで下がりきらないということ。先ほど書いたとおり最後まで下ろした時に自動で押さえ込まれる力が弱いらしい。ショウエイはかなりこの力が強いので密閉が簡単にできるようになっている。

3つ目はロックするために押し付けた反動で右が浮いてしまうということ。ホルダー位置の調整でみっちりくっつければくっつけるほど、ロックが硬くなって強く押し付けた結果右が浮く、という悪循環になってしまう。ということは、シールドをおろしたらさくっとロックされて、その位置で全周が淵ゴムに触れている状態になることが望ましい。少しでも改善するために3つ目を考えて調整する。

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で、数時間格闘した結果・・・・ギブアップ!! ビニールテープを貼り付けてみたけど、数日後には剥がれるし、これはあきらめるところかな。

インカムを取り付け

アライ アストラルXにSB5Xを取り付け

SB5Xを取り付けてみた。 帽体とネックパッドの間に隙間があるのでクリップ式で取り付け。 アライらしく従来と変わりは無いので普通につけられたし特に問題は無い。

アライ アストラルXにSENA 20Sを取り付ける

SENA20Sはベースの下が出っ張っているので、地面に置くとどうしても片側が浮いてしまう。丁寧に扱えば転がったりすることはないけど、少し気をつけたほうが良いだろう。ちなみにマイクはチークパッドの前方に下から埋め込むと邪魔にならずに風切り音も拾いにくくなって良い感じになる。

実走しての観想 プロシェードがすごく便利

アライ アストラルXを被ってバイクにまたがる
VASシールドの開閉をしながらバイクにまたがる

やや前傾のVFR800とDio110で走ってみた。プロシェードはちょっとダサイと思っていたけど、案外普通? 確かにツーリングにきてます!感が強いけどそんなに悪くないような気もする。それでは走ってみた感想を。

静音性はまずまず

シールドの右下にわずかな隙間があるため、高速に乗ると風切り音が少し聞こえてくる。一般道を走っている限りはほとんど気にならないので、高速の時はぐっとシールドを抑えて密閉させると疲れが違う。また、プロシェードの取り付け用部品のせいか風切り音は少し大きめ。プロシェードの位置は中間の場合はわずかに風切り音が大きいが、不快というほどではない。各種ベンチレーションを開けても閉めても同じ程度で、どんな状態でも一定で、総合的に言うとやや風切り音が大きめ。という感じ。音の大きさは (静か)Z-7の口元ベンチを閉める < アストラルX < Z-7の口元ベンチを開ける (煩い)風切り音は低音でボオオオオ!となる。 Z-7は高音のピュルルルル!という感じで音質が異なる。

空力特性は意外と優秀

100km/hで走行したところプロシェードを上げても下げてもほとんど差を感じない。上げたまま横向くと少し押される感じはあるがプロシェードの有無による差異はごくわずかだ。悪化することを覚悟していた分、ちょっと嬉しい結果となった。

ベンチレーションは標準的だがブローシャッターが良くなった

劇的な進化はないものの、今までまったく使う気になれなかったブローシャッターが、これなら開けてもいいな。と思えるくらいによくなっている。額に直にあたるわけではなくこめかみに向けて流れており、それがまたサイドダクトから負圧で抜けているような感じで、目は乾かず顔面が換気されている。従来製品やZ-7に比べての話ではあるが、全体がまんべんなく換気されることで全体がクールダウンされるような感じだ。

欠点はあるがツーリング特化は伊達じゃない

シールドの密閉性問題は何年後になるかわからないけど、次のシステムへの課題として真剣に取り組んでもらいたい。ライバルのショウエイは密閉性を売りにして静音をアピールしているし、実際Z-7の密閉性はすばらしいものがあった。そろそろSNELL固執をやめたり、シールドシステムの大転換等、思い切った策に出てもらいたいものだ。まぁショウエイはショウエイでいつまでも巻き込み風対策が不十分だったりするので、一概にどちらが良いとか悪いとかではないけど。特許とかいろいろあると思うけど、お互いに良い所を認めて自社製品に活かしてほしいと思う。このままではOGKや海外勢に追い抜かれてしまうのではないかと、老婆心ながら長年のアライユーザーとして心配になってしまう次第だ。

結構辛口なことを書いたが、プロシェードやチンカバーが非常に良く出来ているので、ついつい惜しい!という気持ちで書きたくなってしまう。プロシェード半開の日よけが予想以上に便利で、ツーリング先の景色を堪能できる点が特に気に入った。4.5万円と最高級の部類だが、これひとつで夏も冬も、朝も夜も適応できるのは大きなアドバンテージ。ツーリングがメインならおすすめだ。

個人的 10点満点評価
軽さ・・・・・・・・・・・4
大きさ・・・・・・・・・・8
静音性・・・・・・・・・・5
涼しさ・・・・・・・・・・6
被り心地・・・・・・・・・7
空力性能・・・・・・・・・6
品質・・・・・・・・・・・7
インカムの取付やすさ・・・8
機能性・・・・・・・・・・9
ツーリング評価・・・・・9!
街乗り評価・・・・・・・6!
コストパフォーマンス・・・4
総合評価・・・・・・・・7!

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